この事件のポイント
戦後最大の汚職事件
日本の政界を揺るがした国際的汚職スキャンダル
当時の元首相・田中角栄が逮捕
汚職防止の教訓となり、政治資金規正法の改正など日本の政治改革が進む

監修者プロフィール
夜明けの探偵
学生時代から未解決事件やミステリーに目がない事件オタク。法政大学卒業後は一般企業に勤務する傍ら、趣味で事件簿ブログを運営中。最新の犯罪ニュースから昭和の迷宮入り事件まで、幅広く発信している。
ロッキード事件とは?

ロッキード事件は、1976年に発覚した日本の政界を揺るがした巨額汚職事件です。アメリカの航空機メーカー「ロッキード社」が、旅客機を日本市場に売り込むため、日本の政治家に多額の賄賂を提供しました。
事件の中心人物として浮上したのが、元首相の田中角栄。彼は総額約5億円の賄賂を受け取ったとして、逮捕されました。
この事件は、単なる政治スキャンダルにとどまらず、日本の政治と企業の癒着を白日の下にさらし、国民の政治不信を決定的なものにした歴史的事件です。
事件の発端
事件が明るみに出たきっかけは、アメリカ上院の公聴会でした。
アメリカ政府がロッキード社の海外での不正取引を調査したところ、日本の有力政治家への賄賂が発覚したのです。
- 日本の航空会社「全日空(ANA)」に旅客機「L-1011トライスター」を採用させるため
- 日本の政界と財界に巨額の工作資金を提供し、航空業界を動かそうとした
公聴会では、「日本の首相経験者に数百万ドルの賄賂が渡った」と報告され、日本政府にも衝撃が走ります。
捜査の結果、田中角栄がロッキード社から5億円以上の賄賂を受け取っていたことが判明しました。
田中が賄賂を受け取ったとされるルート
- ロッキード社 → 丸紅(商社) → 田中側
- ロッキード社 → 児玉誉士夫(右翼フィクサー) → 田中側
この資金は「黒いピーナッツ」という暗号名で呼ばれ、裏金として田中の懐に流れ込んでいました。

1976年7月27日、東京地検特捜部は田中角栄を受託収賄罪(公務に関する賄賂を受け取る罪)で逮捕しました。
この逮捕は、日本の政治史上初めて元首相が逮捕されるという衝撃的な出来事でした。
国民の間では「総理の犯罪」として大きな話題となり、田中の逮捕はニュースで連日報道されました。
事件が日本の政治に与えた影響
国民の政治不信の高まり
ロッキード事件が日本の政治に与えた影響は計り知れません。
特に、政界と財界の癒着が白日の下にさらされたことで、国民の政治不信が一気に高まりました。
元首相自らが巨額賄賂に手を染めていた事実に、多くの国民が怒りと失望を感じ、「政治とカネ」の問題がクローズアップされました。
ロッキード選挙と自民党の大敗
事件当時の与党・自民党政権(第2次三木武夫内閣)は、このスキャンダルによって支持率が急落します。そして、1976年末に行われた衆議院総選挙は「ロッキード選挙」と呼ばれるほど、事件の影響を色濃く受けました。
選挙の結果、自民党は大幅な議席減少に見舞われ、結党以来初めて単独過半数割れとなり、連立政権を余儀なくされました。
このように、ロッキード事件は日本の政界地図に大きな変動を引き起こしたのです。
その後の政治改革
事件を受け、日本では政治資金の透明化が求められ、次のような改革が進められました。事件を契機に、政治資金の透明化や汚職防止策を求める声が高まり、国会では次のような議論が活発になります。
- 政治家の倫理確立
- 企業献金の規制強化
- 証人喚問制度の活用(国会での証人喚問が積極的に行われるように)
- 国際的な捜査協力体制の整備(後に「国際捜査共助法」の制定)
クリーンな政治への意識改革
ロッキード事件以降、政治家は世論の厳しい目にさらされるようになり、クリーンな政治を掲げる風潮が強まっていきました。
また、この事件は後年の**リクルート事件(1980年代後半)**と並ぶ汚職事件として語り継がれ、1990年代には本格的な政治改革につながります。
特に、以下のような制度改革の下地を作ったことが、ロッキード事件の大きな功績のひとつです。
- 政治資金規正法の改正(企業献金の透明性強化)
- 選挙制度改革(小選挙区制の導入など)
まとめ:ロッキード事件が残した教訓
ロッキード事件は、政治とカネの問題の象徴となり、日本の政治に大きな影響を与えました。事件を契機に、政治資金の透明化や汚職防止策を求める声が高まり、国会では次のような議論が活発になります。
・権力の座にいた人物でも不正が暴かれる
・ 政治資金の透明性が求められるようになった
・ 企業と政治の癒着を防ぐための法改正が進んだ
しかし、それでも「政治とカネ」の問題は現代でも繰り返されています。
ロッキード事件の教訓を忘れず、透明で公正な政治を維持することが重要です。